脚本 直木賞作家・辻村深月が描く、新たな映画ドラえもん

 皆さんと同じように、私も昔から『ドラえもん』が大好きです。そんな『ドラえもん』の映画に脚本担当として関わり、藤子・F・不二雄先生が書いてきたお話の〝続き〟を書くことは、私にとっては聖書の続きを書くようなものでした。自分が書いてしまっていいのか、と緊張とプレッシャーでガチガチになっていた時に、先生のアシスタントを長年務められた、むぎわらしんたろう先生にいただいた言葉があります。

「『映画ドラえもん』、楽しんでください!ドラえもんたち五人も新しい世界に冒険に行けることを、ワクワクして待っているはずです」

 その言葉が、私を今回の脚本に導いてくれました。「藤子先生がそうされたように、私も楽しんで書こう」。そう思って描くドラえもんたちとの月世界の大冒険は、私にとっても、とても楽しいものになりました。
『映画ドラえもん』は、藤子先生の情熱に始まり、たくさんのクリエイターの方たちがそれを引き継いで、今日まで大事につないできてくださったものです。そのバトンを受け取り、次世代につなげるお手伝いができたことを、とても幸せに思っています。
 私の小説のすべてはドラえもんと藤子先生から教えてもらったことでできています。もしドラえもんがいなければ、私は今と同じ形で小説を書いていなかっただろうし、作家になることもなかったと思います。私が先生からいただいたものを、この映画で先生に少しでもお返しできたら、とても嬉しいです。

『映画ドラえもん のび太の月面探査記』、皆さんも、どうぞ楽しんでくださいね!

辻村深月
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1980年生まれ、山梨県出身。04年「冷たい校舎の時は止まる」で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。幼いころから藤子・F・不二雄の作品のファンで、若者の微妙な心情を描く透明感のある文章にファンも多い。11年「ツナグ」で第32回吉川英治文学新人賞を受賞。12年「鍵のない夢を見る」で第147回直木三十五賞を受賞。18年「かがみの孤城」で第15回本屋大賞を受賞。著書に、章タイトルをすべて「ドラえもん」のひみつ道具にした「凍りのくじら」(05年)などがある。

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